今月読んだ本

今月(2023-11)読んだ本は4冊。

観光客の哲学 増補版 ゲンロン叢書 Kindle版

人間は人間が好きではない。人間は社会をつくりたくない。にもかかわらず人間は現実には社会をつくる。なぜか。本書は、その謎を解くヒントを、一般意志の再読にではなく、観光客のありかたに見いだそうと試みるものである。それはまた同時に、一九世紀以降の、まじめな公とふまじめな私を対置させる政治思想への異議申し立てでもある。

ジャンクフードと娯楽に囲まれ、政治も芸術も必要とせず、つぎつぎと提供される新商品に快楽を委ねているだけのアメリカの消費者が「動物」にしか見えないという指摘は、ヘーゲルのパラダイムを知らなくとも、直感的に理解できる読者があいだろう。

観光客の哲学を考えること、それはオルタナティブな政治思想を考えることである。ひとがもし、特定の国家に属してその価値観を内面化するのではなく、ほかの回路で普遍性を手に入れることができるとしたら、それはどのような道をたどることによってか。匿名で、動物的な欲求に忠実で、だれの友にもだれの敵にもならず、ふわふわと国家間を移動する観光客、そんな彼らがもし公共の可能性を開くとすれば、その公共性はどのようなものでありうるか。それが本書の問いだ。

親として生きろ。ひとことで言えば、これがぼくがこの第二部で言いたいことである。むろんここでの親は必ずしも生物学的な親を意味しない。象徴的あるいは文化的な親も存在するだろう。否、むしろそちらの親のほうこそが、ここでいう親の概念には近いのかもしれない。なぜならば、親であるとは誤配を起こすということだからである。そして偶然の子どもたちに囲まれるということだからである。

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書) 単行本 – 2017/4/10

誰か自分の苦労を知って見ている所なら、案外苦労に耐えられます。患者さんも同じで、あなたの苦労はこの私がちゃんと知っていますという主治医がいると、耐え続けられます。

ネガティブ・ケイパビリティが最も自戒するのは、性急な結論づけです。

言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書) Kindle版

とはいえ、日本語ばかりが音の区別が大雑把というわけではない。たとえば、日本語では 「カ/ガ」「夕/ダ」「サ/ザ」といった清濁の区別を体系的に行う。しかし、世界の言語の約30%は清満の対立をまったく持たないという。たとえば、アイヌ語にはp、t、k、sは あるが、b、d、g、zはない。日本語のオノマトペでは写し分けられる「サラサラ」 「ザラザラ」のような違いを、アイヌ語のオノマトペでは写し分けられないようだ。

リディアードのランニング・トレーニング 単行本(ソフトカバー) – 2020/2/27

『鍛えよ、しかし無理をするな』(Train,DontStrain)

「疲労を残すことなく、体力を蓄積していくことができる最適の距離」として週100マイルに行き着いた、と言っていました。

リディアードは「週に7日が最低ラインだ」といつも言っていました。つまり、「走らない日」というものを設けることに反対でした。

私は、そのランナーがどんな練習をしたかなんて全く興味がない。どんなレースをしたかは、新聞を見ればすぐにわかる。

Written on November 30, 2023